脂肪注入とインプラントの違い|生着率50〜80%と、増やせる幅の目安
脂肪注入は入れた分がそのまま残るわけではなく、生着率は50〜80%です。増やせる幅は半カップ〜1カップ。合併症の種類の違いと、乳がん検診への影響、ハイブリッド豊胸という選択肢まで、韓国の形成外科専門医が解説します。
バスト整形 情報 · 脂肪注入とインプラント
UNE美容外科 金誼健院長 · 韓国の形成外科専門医 ·
脂肪注入は、入れた分がそのまま残るわけではありません。生き残るのは50〜80%で、ここに個人差があります。
ですから増やせる幅は半カップ〜1カップ。1カップ以上を確実にという場合はインプラントが現実的です。
痩せ型で採取できる脂肪が少ない方は、そもそも脂肪注入では量を作れません。
豊胸には、インプラントを入れる方法と、自分の脂肪を移す方法があります。
この2つは「どちらが優れているか」ではなく、増やせる幅と、抱えるリスクの種類がそもそも違います。
「異物を入れるのに抵抗があって……脂肪注入ではだめですか?」
自分の組織で増やせるなら、そのほうが安心だと感じるのは自然なことです。
ただし脂肪注入には、インプラントにはない前提がひとつあります。
それが生着率という数字です。ここから順に整理します。
脂肪注入の前提 ── 生着率50〜80%

脂肪注入は、太ももやお腹から採った脂肪をバストに移す方法です。
移した脂肪のうち、血流がつながって生き残った分だけが残ります。
この割合を生着率といい、50〜80%の範囲で人によって違います。
つまり同じ量を注入しても、最終的な大きさは変わります。
インプラントが「入れたccがそのまま残る」のと、いちばん違うところです。
増やせる幅の目安 ── 半カップ〜1カップ
2020年に発表された大規模な分析(22件・2,073名、平均21か月の追跡)では、1人あたり平均297mLを注入し、85.1%が1回の手術で完了していました。
片側にすると約150mLです。生着を差し引くと、インプラントで200〜250ccを入れたくらいの変化にあたります。
ですから脂肪注入は半カップ〜1カップの自然な増量に向いた方法です。
それ以上を確実に、という場合はインプラントが現実的な選択になります。
合併症の種類が、そもそも違います
同じ分析での脂肪注入の合併症です。
触れるのう胞 2.0%(うち67.9%は吸引で解決)
感染 0.6%/血腫 0.5%/漿液腫 0.1%
主要な合併症を合わせて1.6%。再手術が必要だった方は0名
数字としては低いです。
インプラント側の代表的な合併症は被膜拘縮・破損・位置のずれで、種類そのものが違います。
どちらも「合併症のない手術」ではありません。違う種類のリスクを管理する手術だ、と理解していただくのが正確です。
見落とされやすい論点 ── 乳がん検診への影響
ここが、あまり語られないところです。
同じ分析で、画像検査での変化はこう報告されています。
オイルのう胞 6.5%、石灰化 4.5%、脂肪壊死 1.2%。
日常で感じる不調ではありません。ですがマンモグラフィの読影に影響します。
追加の画像検査が必要になった方が16.4%、組織検査をすすめられた方が3.2%いました。悪性と診断された方はいません。
ですから脂肪注入を受けた方には、定期的な画像検診を続けていただく必要があります。
当院が一度に大量の脂肪注入をお勧めしない理由も、ここにあります。多く入れるほど生着しなかった脂肪が石灰化し、検診での判断を難しくします。
適応の分かれ目 ── 増やしたい量と、採れる脂肪の量
脂肪注入が向いている方
半カップ〜1カップの自然な増量を望まれる。採取できる脂肪が十分にある。異物を入れることに抵抗がある。
インプラントが向いている方
1カップ以上の確実な変化を望まれる。痩せ型で採取できる脂肪が少ない。一度の手術で予測できる結果がほしい。
併用(ハイブリッド)が向いている方
インプラントで土台の量を作り、谷間や上胸部のへこみを脂肪で補いたい。
当院の使い方 ── 単独ではなく「補う脂肪」として
当院の方針を明確にしておきます。
脂肪注入は、単独で大量に入れるより、インプラントの仕上げに使うほうが満足度が高いというのが、当院での経験です。
たとえば谷間を寄せる、インプラントのふちをぼかして自然になじませる。
上胸部が薄い方では、これがリップリング対策にもなります。
よくあるご質問
Q. 脂肪注入だけで2カップ増やせますか?
現実的ではありません。1回で注入できる量には限りがあり、生着率も50〜80%です。2カップ以上を確実に、という場合はインプラントが適応になります。
Q. 生着した脂肪は、そのあと減りませんか?
血流がつながって生き残った脂肪は、その後も定着します。ただしご自身の脂肪細胞なので、体重が大きく減れば一緒に減ります。
Q. 脂肪吸引した部分は、またリバウンドしますか?
吸引した部位は脂肪細胞の数そのものが減るため、同じようには戻りにくくなります。ただし体重が増えれば残った細胞が大きくなります。
Q. インプラントを入れたあとから、脂肪を追加できますか?
できます。輪郭を整える目的での追加は、当院でも実際に行っています。時期は形が落ち着いた3〜6か月以降が目安です。
Q. 石灰化が起きたら、取り除く必要がありますか?
症状がなければ経過観察が基本です。問題になるのは治療ではなく、検診の読影で判断が難しくなる点です。受けたことを必ず伝えてください。
脂肪注入を検討する前に確認する4項目
カウンセリングで、当院が事前に確認している項目です。
一、採取部位に十分な脂肪があるか 太もも・お腹・腰から採ります。痩せ型の方は必要量が採れず、そもそも計画が成立しないことがあります。
二、目標が半カップ〜1カップの範囲か これを超える希望であれば、回数を分けるか、インプラントを併用する前提になります。
三、体重を維持できるか 生着した脂肪はご自身の脂肪細胞なので、体重の増減とともに動きます。
四、定期的な画像検診を続けられるか 石灰化やオイルのう胞が生じた場合、読影に前提の共有が必要になります。
この4つのうちどれかが揃わない場合、脂肪注入を第一選択にはしていません。
ハイブリッド豊胸という選択肢
インプラントで量を作り、脂肪で輪郭を整える組み合わせです。当院ではこの使い方が中心になります。
適しているのは次のような場合です。
一、上胸部が薄く、インプラントのふちが出やすい方 脂肪で覆いを足すと、段差がなじみます。リップリング対策にもなります。
二、谷間の印象を強めたい方 インプラントだけでは内側に寄せる量に限界があります。
三、左右差がある方 インプラントで大枠を合わせ、残った差を脂肪で調整します。
注入量は、単独で行う場合よりも大幅に少なくなります。石灰化のリスクは注入量に比例するため、検診への影響も抑えられます。
費用の考え方が、インプラントとは違います
脂肪注入は、脂肪吸引と注入という2つの手術を同時に行う構造です。そのため費用の内訳が、インプラント手術とは異なります。
確認しておきたいのは次の3点です。
一、採取部位の数が費用に含まれるか 1か所で足りず、複数箇所から採る場合があります。
二、2回目を行う場合の費用条件 生着率によっては追加が必要になります。その際の条件を先に確認してください。
三、採取部の術後ケアが含まれるか 吸引した部位にも圧迫と経過観察が必要です。
まとめ
一、脂肪注入は生着率50〜80%。入れた分がそのまま残るわけではありません
二、増やせる幅は半カップ〜1カップ。それ以上ならインプラント
三、検診への影響があります。受けたことは必ず伝えてください
「どちらがいいですか」という問いは、「どのくらい増やしたいか」と「採れる脂肪があるか」の2つに置き換えると答えが出ます。
この2点が決まれば、選択肢はほぼ絞られます。
※ 豊胸手術(シリコンインプラント挿入術・脂肪注入)は自由診療です。腫れ・内出血・痛み・感染・血腫・のう胞・石灰化・脂肪壊死・被膜拘縮・左右差などのリスクがあります。個人によって効果や副作用は異なることがあり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。適応と費用は診察のうえでご案内しています。
※ 本記事で引用した数値は Ørholt M, et al. Plast Reconstr Surg. 2020;145(3):530e(22件・2,073名のシステマティックレビュー)によります。診断に代わるものではありません。
よくある質問
Q. 脂肪注入だけでどのくらい大きくできますか?
A. 生き残る脂肪は注入量の50〜80%で個人差があり、増やせる幅は半カップ〜1カップが目安です。1カップ以上を確実に増やしたい場合はインプラントが現実的です。
Q. 脂肪注入とインプラントはどちらが安全ですか?
A. 優劣ではなく、リスクの種類が違います。脂肪注入には生着率のばらつきやしこり、インプラントには被膜拘縮など、それぞれの前提があります。増やしたい幅と体型で選び分けます。
Q. 痩せていても脂肪注入はできますか?
A. 採取できる脂肪が少ない方は、脂肪注入だけでは十分な量を作れません。痩せ型の方はインプラント、または組み合わせを検討することになります。


