デュアルプレーン豊胸 Type I・II・III — Tebbetts 468名 2001
Tebbetts PRS 2001のデュアルプレーンType I/II/III分類アルゴリズム解説。乳腺-筋膜付着・IMF上乳腺分布・stretch 3変数で決定。468名のIMF malposition・double-bubble 0件報告を韓国の形成外科専門医・金誼健院長が整理しました。
「デュアルプレーン豊胸が良いと聞きますが、すべて同じ方式ですか?」本記事ではこのテーマを扱った論文をご紹介します。デュアルプレーン(dual plane)は単一の技法ではなく、バスト類型別の3つの変形(Type I・II・III)で構成された分類体系です。Tebbettsが1992〜1998年の7年間に実施した468名の連続症例を整理して2001年Plastic and Reconstructive Surgeryに発表した論文が、この分類の原典です。
同じ「デュアルプレーン手術」でもType IとType IIIは、筋肉-実質の分離範囲が完全に異なります。そしてどのTypeを適用するかは術者の好みではなく、患者様のバストの解剖学が決定します。本記事では、「どのバストにどのTypeを適用するか」という決定アルゴリズムの観点でTebbetts分類を整理します。
決定変数3つ — Typeを分ける解剖学的基準
Tebbetts分類は、診察室で手で触れて確認できる3つの解剖学的変数でTypeを決定します。どのようなバストかをまず定義してこそ、どのTypeが合うかが続きます。決定変数を先に整理します。
① 乳腺実質-筋膜付着(parenchyma-to-fascia attachment) — 乳腺実質が大胸筋筋膜にどれほど強く付着しているかを確認します。付着が強いと、インプラントを筋肉下に挿入しても乳腺実質が一緒に伸びず、筋肉シルエットと乳腺シルエットが別々に動く'double-bubble'(二重シルエット)変形が生じうる場合があります。付着が弱いほどインプラントが乳腺を引いて伸ばす幅が大きくなります。
② バスト下乳線(IMF, inframammary fold)の上に乳腺が占める比率 — バスト下乳線より上方に乳腺実質がどれほど分布するかを確認します。正常が最もよく見られる分布で、比率が下がるほど(例:75%、50%以下)乳腺実質が下乳線の下に伸びた'glandular ptosis'(乳腺下垂、皮膚下垂とは異なる概念)の状態に進行します。この比率はType IIとType IIIを分ける決定的基準です。
③ 乳腺実質の伸び具合(stretch) — ピンチテスト(親指と人差し指で乳腺の厚さをつまむ検査)と乳頭-IMF距離で評価します。乳頭-IMF距離が短く乳腺が硬く凝縮されている場合は、'constricted breast'(圧縮型バスト、結節の一種)またはtuberous変異に分類され、別途のアプローチが必要です。距離は正常ですが伸びている場合は、そのままstretchが大きいバストに分類します。
3つの変数を組み合わせると、患者様がどのType領域に属するかが自然に決定されます。このアルゴリズムは術者の主観ではなく、測定可能な指標の上に立てられたという点が、Tebbetts論文の重要な貢献です。
Type I — 一般的なバスト(typical breast)の決定経路
該当患者様: 乳腺がIMFの上に正常に分布 · 乳腺-筋膜付着が正常 · 下垂なし 手術範囲: 大胸筋のIMF付着部のみ切断、筋肉-実質の追加分離なし 適用比率(Tebbettsコホート): 約70%
Type Iは最もシンプルな変形です。乳腺実質がバスト下乳線の上に正常に分布し、乳腺-筋膜の付着も正常で下垂のない方に適用します。大胸筋のIMF付着部(バスト下乳線に沿って筋肉が肋骨に付着する最も下のライン)のみ切断し、その上方の筋肉-実質間を分離しません。
これだけでもインプラント上極は大胸筋によく覆われて自然なラインを作り、インプラント下極はIMFの上で自然に伸びる乳腺実質と直接接触します。分離範囲が最も狭いため、筋肉支持力の損失がほぼなく、アニメーション変形(筋肉収縮時にインプラントが押されて形態が変わる現象)も最も少ないです。正常なバストであれば、あえてより広範に分離する理由がないというのがTebbettsの結論です。
Type II — 弛緩したバスト(loose breast)の決定経路
該当患者様: 乳腺がIMFの上75%以上分布 · 乳腺-筋膜付着が弱い(stretch中等度) 手術範囲: 筋肉-実質の分離をIMFレベルまで拡張(乳頭の下の領域) 適用比率(Tebbettsコホート): 約20%
Type IIは、乳腺実質がやや伸びており、乳腺-筋膜付着が弱く、単純なType Iの切開だけではインプラント下極の乳腺カバーが不足するケースに適用します。Type Iと同様にIMF付着部を切断した後、筋肉-実質間の剥離をIMFレベル(バスト下乳線と乳頭の間の領域)まで上方に拡張します。
こうすることでインプラント下極が乳腺実質の内側面とより広く直接接触でき、伸びた乳腺実質がインプラントに沿って自然に再配置されます。乳頭の上はまだ大胸筋がインプラントを覆っているため、上極ラインの自然さは維持されます。妊娠・体重変化後にやや弛緩したバスト、出産後に乳腺がわずかに下垂したバストが、典型的なType II候補です。
Type III — constricted/glandular ptosisの決定経路
該当患者様: 乳腺がIMFの上50%以下分布 · glandular ptosis · またはconstricted/tuberous変異 手術範囲: 筋肉-実質の分離を乳頭上端(乳輪上縁)まで拡張 適用比率(Tebbettsコホート): 約10%
Type IIIは最も広範な変形です。乳腺実質がバスト下乳線の上に50%以下のみ分布するglandular ptosis(皮膚は伸びていないものの乳腺だけが下垂した状態)、または乳頭-IMF距離が短く乳腺が硬く凝縮されたconstricted/tuberousバストが適用対象です。筋肉-実質の剥離を乳頭を越えて乳輪上端まで拡張します。
分離範囲が広いほど、インプラントが伸びた乳腺実質を内側から広範に伸ばせ、乳腺実質がインプラントの上に自然に再配置されて下垂の外観も同時に矯正されます。constricted breastの場合は、乳腺実質の凝縮されたパターンを内側からほどく効果も兼ねます。ただし、分離範囲が広くなるほど筋肉支持力の損失、出血、アニメーション変形のリスクが併せて増加するため、Type IIIは適応症が明確な時のみ選択する変形であることが核心です。
Type IIIは、よく「下垂バストは必ずリフトが必要である」という認識を補完する臨床的意味があります。皮膚下垂が重度でないglandular ptosisであれば、Type IIIデュアルプレーンだけでリフト効果まで併せて得られるというのがTebbettsの主張で、その後多数の後続研究がこれを裏付けています。
468名の結果 — 分類アルゴリズムが作り出した臨床指標
· 対象: 1992〜1998年の単一執刀医(Tebbetts)連続症例468名/追跡≥1年 · Type分布: Type I 約70% · Type II 約20% · Type III 約10% · IMF malposition(下乳線位置異常): 報告0件 · double-bubble変形: 報告0件 · 再手術率: 約1.7%(報告された標準値に比べて非常に低い) · 患者様満足度: 約96%
468名コホートの結果で最も印象的な指標は、IMF malposition 0件、double-bubble 0件という点です。両方とも「筋肉下豊胸の代表的な合併症」として知られた変形です。IMF malpositionは、インプラントが元のバスト下乳線より下に下垂して定着する現象で、double-bubbleは筋肉シルエットと乳腺シルエットが分離してバスト下乳線に2つの輪郭が見える変形です。両合併症とも「どのバストにどのTypeを選んだか」が決定します。
単純なType Iの適用だけでは伸びた乳腺実質を十分に伸ばせずdouble-bubbleが生じ、逆に正常なバストに無理にType IIIを適用すると筋肉支持力が下がりIMF malpositionが発生します。つまり両合併症の0件報告は、分類アルゴリズムそのものの精密度が作り出した結果として解釈されます。再手術率1.7%、患者様満足度96%も同じ文脈です。
ただし、この結果は単一執刀医の連続症例という限界があります。無作為対照群比較研究ではなく観察研究で、Tebbettsご本人の診断精度と術式に強く依存します。ただし、その後多数の機関で同じ分類アルゴリズムにより類似の合併症率の減少が再現され、現在は豊胸の教科書の標準分類として位置付けられています。
FAQ — よくあるご質問
Q. 私のバストはどのTypeに該当するか事前に分かりますか?
A. 正確なTypeは医師の診察で、乳腺-筋膜の付着程度、IMF上の乳腺分布比率、stretch(ピンチテスト・乳頭-IMF距離)を評価して決定する必要があります。一般的なバスト(下垂がなく乳腺が正常分布)であればType I、出産・体重変化でやや弛緩していればType II、glandular ptosisまたはconstricted/tuberous変異であればType IIIが推奨される傾向です。
Q. Type番号が大きいほどより良い手術ですか?
A. いいえ。Type番号は剥離範囲が段階的に拡張されたことを意味するだけで、正常なバストに無理にType IIIを適用すると、筋肉支持力の損失でIMF malposition・アニメーション変形のリスクが増加します。患者様の解剖に合うTypeの選択が、合併症を減らす核心です。
Q. 下垂があるのに、リフトの代わりにType IIIだけで解決できますか?
A. 皮膚下垂が重度でないglandular ptosis(乳腺のみ下垂した状態)であれば、Type IIIデュアルプレーンだけでリフト効果まで得られるとTebbettsが報告し、その後多数の後続研究がこれを裏付けています。ただし、皮膚下垂が重度の場合はリフト(Mastopexy)が別途必要となる場合があり、医師の評価が推奨されます。
Q. この分類はすべてのインプラント種類にそのまま適用されますか?
A. Tebbetts分類は剥離平面決定アルゴリズムであるため、ラウンド・しずく、スムース・テクスチャード、モティバ・メンターなどのインプラントの種類と無関係に適用可能です。ただし、インプラントの凝集度・プロファイル・表面に応じて、同じTypeでも微細な剥離デザインの調整が必要となる場合があり、医師の判断が重要です。
3つのポイント整理
① デュアルプレーンは単一技法ではなく、患者様類型別の決定アルゴリズム
Type I・II・IIIは筋肉-実質の分離範囲が段階的に拡張される3つの変形です。どのTypeが適用されるかは、乳腺-筋膜の付着程度、IMF上の乳腺分布比率、stretchの程度という3つの測定可能な変数で決定されます。
② 分類の精密度が合併症0件報告を作った
468名コホートでIMF malposition 0件、double-bubble 0件、再手術率1.7%という結果は、分類アルゴリズムそのものの精密度が作り出した臨床指標です。「より広く分離する」ではなく「そのバストに合わせて分離する」が核心です。
③ Type IIIはglandular ptosisの非リフト選択肢となりうる
乳腺のみ下垂したglandular ptosisは、Type IIIデュアルプレーンだけでリフト効果を併せて得られるというのがTebbettsの臨床的主張です。ただし、皮膚まで伸びた真のptosisはリフトの併用が必要であるため、下垂の種類を正確に評価することが出発点です。
Tebbetts 2001 PRS論文が整理した結論は明確です。デュアルプレーン豊胸は一つの技法ではなく、患者様のバスト解剖学に応じてType I・II・IIIを選択して適用する決定アルゴリズムであり、分類そのものの精密度が合併症率と満足度を決定します。単一執刀医の観察研究という限界はありますが、その後多数の機関の再現結果により標準分類として位置付けられました。ご自身のバストがどのTypeに該当するかは、診察室での理学的検査で正確に評価する必要があり、個人によって効果や副作用が異なる場合があるため、詳細は医師にご相談ください。
参考文献 Tebbetts JB. Dual Plane Breast Augmentation: Optimizing Implant–Soft-Tissue Relationships in a Wide Range of Breast Types. Plast Reconstr Surg. 107(5):1255-1272, 2001. doi: 10.1097/00006534-200104150-00027

