インプラント除去時の被膜切除 — 医師736名グローバル調査
インプラント除去と被膜切除に関する世界736名形成外科医の意見調査PRS 2022。位置別en bloc/total/partial選択、BII背景を韓国の形成外科専門医・金誼健院長が整理しました。
韓国豊胸 情報 · 論文解説
ウンヌ整形外科 金誼健(キム・ウィゴン)院長 · 形成外科専門医 ·
参考論文:Scheflan M, Gronovich Y, Maisel Lotan A, Winder G. "What 736 Plastic Surgeons Think about Explantation and Capsulectomy: A Global Opinion Poll." Plastic and Reconstructive Surgery. 149(6):1071e-1080e, 2022.
世界の形成外科医736名に対し、バストインプラント除去(Explantation)と被膜切除(Capsulectomy)に関する意見を聞いたグローバル調査結果があります。
2022年にScheflan研究チームがPlastic and Reconstructive Surgery誌に発表した、7大陸736名の意見調査です。
インプラント除去時に被膜も同時に切除すべきか
結論から申し上げますと、2点目、インプラント位置によって推奨される切除方式が異なります。本論文(Plastic and Reconstructive Surgery、2022、n=736名)の核となる結果について、以下で詳しく整理してご案内いたします。
どのような研究ですか?
世界7大陸の形成外科医に対し、インプラント除去・被膜切除に関する20項目の選択式質問を行った匿名アンケート研究です。
- 対象:形成外科専門医736名(2020年2〜3月回答)
- 経歴分布:10年超84.8%、20年超54.6%
- 地域分布:北米36.3%、西ヨーロッパ19.7%、中東10.5%、ロシア10%、東ヨーロッパ8.9%、南米7%、オーストラリア・ニュージーランド5.2%
- 診療形態:単独開業51.9%、グループ開業23.6%、併行16.7%、学術専従7.8%
- 分析方法:Google Formsベース匿名アンケート、IBM SPSS v20
- 研究の限界:自己報告意見調査 — 実際の施術データや患者結果ではない
重要な前提として、本研究は医師の態度と推奨方式を問う意見調査であるという点です。実際の施術結果やBII患者の改善有無を測定した研究ではありません。
インプラント除去は増加、ただし被膜は別
直近1年間でインプラント除去施術が増加したと回答した医師は69.8%でした。地域差が大きく見られました。
- オーストラリア・ニュージーランド:91.9%増加
- 北米:82.7%
- 中東:74%
- 西ヨーロッパ:62.1%
- 南米:59.6%、東ヨーロッパ:57.6%
- ロシア:43.2%(最低)
興味深い点は、インプラント除去そのものと被膜切除の同時施行を、医師たちが異なるものとして捉えているということです。
- 「インプラント除去は患者様の正当な要請である」:95.2%同意
- 「被膜切除も同時に施行する」:77.2%同意
- 症状のある患者様 → インプラント除去同意:98%、被膜切除まで:89.9%
- 症状のない患者様 → インプラント除去同意:94.3%、被膜切除まで:82.9%
被膜切除の拒否率は、インプラント除去単独の拒否率の約5倍と高くなりました。著者らは、被膜切除には合併症リスクが明確に存在する一方、立証された臨床的利益が不足していることを理由として解釈しています。
経歴による差もありました。5年未満の医師は75.8%しか症状のある患者様への被膜切除に同意しなかったのに対し、5年以上では90.6%が同意しました。学術専従医(73.7%)よりも開業医(91%前後)のほうが被膜切除の受容度が高い傾向でした。
位置別の推奨切除方式
被膜切除を行う場合の方式は、インプラント位置によって意見が分かれました。
乳腺下(Subglandular)位置:
- En bloc(被膜+インプラントを一塊で):52.5%
- Total(被膜全体を分離後に除去):33.7%
- Partial(部分除去):8.2%
筋肉下/デュアルプレーン(Subpectoral/Dual-plane)位置:
- Total:37.6%
- En bloc:31.4%
- Partial:25.9%
筋肉下でen bloc比率が21.2ポイント低下する理由は明確です。肋骨と肋間筋に被膜が強く癒着しているため、一塊で剥離しようとすると神経損傷、気胸、慢性痛、出血のリスクが高まるためです。
ただし、著者らが強調する点があります。「En bloc」という用語は本来、腫瘍手術において腫瘍と正常組織の境界を一緒に切除する際に使用される用語です。良性の被膜除去にこの用語を用いることが医学的に正確であるかについて、学会内で議論があるという点を併せて押さえておきます。
脂肪注入との併施についても意見が分かれました。68.7%が、被膜切除と同時の脂肪注入は制限されると回答しました。一方で26.3%は正常な被膜をそのまま残して脂肪注入を推奨し、44.5%は症状のある患者様には正常被膜であっても除去を推奨すると回答しました。
よくある質問
Q. インプラントを除去する際、被膜も必ず一緒に取り出す必要がありますか?
A. 必須ではありません。本調査では医師の77.2%が被膜切除の同時施行に同意しましたが、拒否率はインプラント除去単独の5倍高くなりました。薄く正常な被膜はインプラント除去後に自然吸収される傾向があり、カルシウム沈着がある場合や肥厚した被膜は除去が推奨されます。患者様の症状・被膜状態・インプラント位置に応じてご決定いたします。
Q. En bloc切除はどのような患者様に推奨されますか?
A. 本来「en bloc」は腫瘍手術用語であり、腫瘍を正常境界とともに一塊で切除するという意味を持ちます。良性の被膜除去にこの用語を用いることについては、学会内で議論があります。本調査では乳腺下位置で52.5%がen blocに同意した一方、筋肉下では31.4%まで低下しました。肋骨癒着部位では合併症リスクが高くなるためです。
Q. インプラント除去と同時に脂肪注入を受けることは可能ですか?
A. 可能です。ただし本調査では医師の68.7%が被膜切除と同時の脂肪注入は制限されると回答しました。26.3%は脂肪注入のために正常な被膜をそのまま残すことを推奨しています。乳房状態と患者様のご目的に応じて、段階的施術または同時施術をご決定いただく必要があります。
Q. 韓国の患者様に本調査結果をそのまま適用できますか?
A. 部分的にのみ適用可能です。本調査ではオーストラリア・北米・西ヨーロッパでen bloc/totalの受容率が70〜80%であった一方、中東では45.9%と低くなりました。地域別の患者要請パターン、医療文化、SNSの影響が異なるという点がデータで確認されています。韓国は単独で分析されていないため、医療従事者との直接の相談が必要となります。
この論文を読んで整理した3つのポイント
1点目、インプラント除去そのものと被膜切除の同時施行は、別の判断です。
医師の95.2%が患者様のインプラント除去要請を正当と捉えた一方、被膜切除の同時施行については77.2%のみが同意しました。拒否率は5倍高くなりました。薄く正常な被膜は自然吸収される傾向があり、肥厚した被膜は除去が推奨されます。
2点目、インプラント位置によって推奨される切除方式が異なります。
乳腺下位置はen bloc 52.5%が最も多い選択ですが、筋肉下ではtotal 37.6%が最多であり、en blocは31.4%まで低下します。肋骨癒着部位で一塊で剥離しようとすると、神経・気胸・痛みのリスクが高まるためです。
3点目、本研究には明確な限界があります。
本データは医師の意見調査であり、実際の施術結果やBII患者の改善を測定した研究ではありません。回答は匿名であり、地域別の回答比率も均等ではありません(北米36.3%、オーストラリア・ニュージーランド5.2%)。したがって「このようにすべきである」ではなく、「世界の医師がこのように考える傾向がある」と読み取る必要があります。
私はこの調査において、回答医師の69.8%がBIA-ALCLおよびBII関連の議論を受け、直近3年間でインプラント選択と施術姿勢を変更したと回答した部分が印象的でした。医療現場が患者様の懸念と新規データに迅速に適応していることを示しています。当院でも、患者様からインプラント除去のご要請をいただいた際は、被膜状態・症状・インプラント位置を総合的に判断し、単独除去が適切か、被膜切除まで推奨するかを慎重にご決定いたします。患者様の自律性と診療安全性の間でバランスを取ることが核となると考えています。
参考文献:Scheflan M, Gronovich Y, Maisel Lotan A, Winder G. "What 736 Plastic Surgeons Think about Explantation and Capsulectomy: A Global Opinion Poll." Plastic and Reconstructive Surgery. 149(6):1071e-1080e, 2022. DOI: 10.1097/PRS.0000000000009090
本記事は上記論文を医学的専門知識に基づき、一般の方にもわかりやすく解説した内容です。個々の手術結果は体型、インプラントの種類、執刀医の手技、手術環境によって異なることがあり、本記事は診断や治療に代わるものではありません。

