乳房挙上術 — 下垂治療の3術式と回復・瘢痕の総合ガイド
乳房挙上術(Mastopexy)のRegnault 1〜3分類、乳輪周囲・垂直・逆T字の3切開パターン、回復期間と瘢痕、挙上単独 vs インプラント併用判断を韓国の形成外科専門医・金誼健院長が整理しました。
韓国豊胸 情報 · 乳房挙上術 総合ガイド
ウンヌ整形外科 金誼健(キム・ウィゴン)院長 · 形成外科専門医 ·
出産・授乳、体重減少、加齢により乳房が下垂された患者様から最もよくいただくご質問が、「乳房挙上術(マストペクシー)は必ず必要ですか?」というものです。
「瘢痕は多く残りますか?」「インプラントも併用すべきですか?」「回復期間はどの程度ですか?」「再び下垂しますか?」 — カウンセリング室でよくいただくご質問です。本記事では、乳房挙上術の適応・分類・術式・瘢痕・回復期間・インプラント併用について、論文ベースで整理してご案内いたします。
乳房挙上術とは — 乳房下垂手術のポイント整理
結論から申し上げますと、乳房挙上術(マストペクシー)は下垂された乳房を上方に引き上げ、乳頭・乳房ラインを再調整する手術であり、下垂程度によりインプラント併用の可否が変わります。Regnault分類1〜3段階で下垂を評価し、切開パターンは①乳輪周囲(Periareolar)、②垂直(Vertical)、③逆T字(Wise/Inverted-T)の3種類のなかから下垂程度に合わせて選択します。回復期間は一般的に、日常復帰1〜2週、運動再開4〜6週、瘢痕安定6ヶ月〜1年です。挙上術単独で平均カップサイズが1段階程度減少するという9年追跡データ(Weichman PRS 2014)も報告されています。
1. 乳房挙上術(Mastopexy)とは
乳房挙上術(Mastopexy)は、下垂された乳房組織を上方に引き上げ、乳頭・乳房ラインを再調整する手術です。単純にインプラントを挿入する豊胸手術とは目的が異なります。
- 豊胸手術(Augmentation):乳房サイズ・ボリュームの増加が目的
- 乳房挙上術(Mastopexy):下垂された乳房の引き上げ・乳頭位置の再配置 — サイズ変化は副次的
- 挙上+インプラント(Augmentation Mastopexy):下垂矯正+ボリューム補強を同時施行
適応:
- 出産・授乳後の乳房下垂
- 体重減少後の乳房ボリューム喪失+下垂
- 加齢による皮膚弾力低下
- 乳頭が乳房下溝(IMF)より下方に位置するケース
2. 乳房下垂の分類
下垂(Ptosis)の程度は、Regnault分類1〜3段階で評価します。乳頭と乳房下溝(IMF)の位置関係が核となる基準です。
- Grade I(軽度下垂):乳頭がIMFと同じ高さに位置 — 挙上のみで矯正可能、またはインプラント単独で部分的矯正
- Grade II(中等度下垂):乳頭がIMFより低位だが、乳房最下部よりは上方 — 挙上術+インプラント併用がよく推奨される
- Grade III(強度下垂):乳頭が乳房最下部に位置、または下方を向いている — 挙上術必須、インプラント併用は要判断
- Pseudoptosis(仮性下垂):乳頭位置は正常だが、乳房下部のボリュームが減少した状態 — インプラントのみで矯正可能
ご自身がどの段階に該当するかの自己判断は困難であり、医師が乳頭位置+乳房ラインを計測して判断いたします。
3. 乳房挙上術の3つの術式
下垂程度と瘢痕長さに応じて、切開パターン3種類のなかから選択いたします。
- ① 乳輪周囲(Periareolar / Doughnut Mastopexy):
- 乳輪周囲をドーナツ状に切開
- 軽度下垂(Grade I)に適応
- 瘢痕が最も短く、乳輪の内側に自然に隠れる
- 限界:下垂矯正の幅が限定的
- ② 垂直(Vertical / Lollipop Mastopexy):
- 乳輪周囲+乳輪下垂直方向の切開(ロリポップ型)
- 中等度下垂(Grade II)に適応
- 瘢痕:乳輪+垂直線 — 時間とともに薄くなる
- 形状・ボリューム再配置に有利
- ③ 逆T字(Wise / Inverted-T Mastopexy):
- 乳輪周囲+垂直+IMFに沿った横方向切開(逆Tまたはアンカー型)
- 強度下垂(Grade III)に適応
- 瘢痕が最も長いが、最も大きい下垂矯正が可能
- 大量体重減少後の挙上によく使用される
4. 乳房挙上術の瘢痕
挙上術の最大の短所は瘢痕です。瘢痕程度は切開パターンと回復段階により異なります。
- 1〜3ヶ月:赤色・わずかに隆起した状態 — 最も濃く見える
- 3〜6ヶ月:色が薄くなり始め、隆起が減少
- 6ヶ月〜1年:肌色に近く薄くなり、平坦化 — 最終状態
- 1年以降:瘢痕安定 — 大きな変化なし
瘢痕管理のポイント:
- 術後1ヶ月からシリコンシート・軟膏使用(医師の指示に従う)
- 紫外線対策(SPF 30+)を6ヶ月以上
- 禁煙(ニコチンが瘢痕回復を遅らせる)
- 緊張度を緩和する補正下着の着用
参考として、BREAST-Q満足度研究では、12ヶ月以上経過したグループの瘢痕評価が最も良好だったというデータも報告されています — 時間が瘢痕にとって最も良い薬といえます。
5. 回復期間
乳房挙上術の回復は豊胸手術と類似していますが、瘢痕安定にはより長い時間が必要となります。
- 1〜7日目:痛み・腫れが最も強い、鎮痛薬の定時服用、仰臥位での睡眠
- 1〜2週:事務職での出勤可能、軽い日常活動
- 2〜4週:腫れが半分程度減少、形状が定着し始める
- 4〜6週:軽い運動(ウォーキング・下半身ストレッチ)開始可能
- 3ヶ月:激しい運動可能、形状・感触が自然になる
- 6ヶ月〜1年:瘢痕安定、最終形状・感触の形成
段階別回復の詳細は豊胸の回復期間 段階別整理をご参考ください。挙上術も5要素(剥離範囲・出血量・手術時間・挿入層・術後管理)により回復速度が異なります。
6. 挙上単独 vs インプラント併用
下垂程度と患者様のご希望結果により、挙上単独またはインプラント併用を選択いたします。
挙上単独(Mastopexy alone)
- 適応:乳房ボリュームは十分だが下垂のみあるケース
- 結果:下垂矯正+形状再配置、ただし乳房容量はわずかに減少することがある
- 9年追跡データ:挙上単独で平均ブラカップ1段階減少(Weichman et al., PRS 2014、20名9年追跡)
- 長所:インプラント関連合併症(カプセル拘縮・破裂)なし、合併症リスク低
- 限界:乳房上部ボリュームが不足する場合、結果に満足しにくいことがある
挙上+インプラント併用(Augmentation Mastopexy)
- 適応:下垂+乳房ボリューム不足を併発、出産・授乳後によく見られるケース
- 結果:下垂矯正+上部ボリューム強化を同時達成
- 長所:満足度が高い — BREAST-Qスコア向上が挙上単独より大きい傾向
- 限界:手術複雑度上昇、回復が長くなる場合あり、インプラント合併症の可能性
- 2段階 vs 1段階:一部の術者は安全性を考慮し、挙上術 → 6〜12ヶ月後にインプラント挿入(2段階)を推奨することもある
下垂とインプラント単独 vs 挙上の比較については、乳房下垂の矯正 — 挙上術とインプラントの判断基準でも扱っています。
よくある質問
Q. 乳房挙上術は必ずインプラントを併用する必要がありますか?
いいえ。下垂のみで乳房ボリュームが十分であれば、挙上単独でも矯正可能です。ただし、出産・授乳後の下垂+ボリューム喪失を併発したケースでは、挙上+インプラント併用のほうが満足度が高い傾向にあります。ご自身の乳房ボリューム・ご希望結果・ライフスタイルを医師と相談のうえご決定ください。挙上単独で平均ブラカップ1段階減少が報告されている点も併せてご参考ください(Weichman PRS 2014)。
Q. 乳房挙上術の瘢痕は多く残りますか?
切開パターンにより異なります。乳輪周囲(Periareolar)は乳輪の内側に短く、垂直(Vertical/Lollipop)は乳輪+垂直線、逆T字(Wise/Inverted-T)は乳輪+垂直+IMF横方向の瘢痕が残ります。瘢痕は1〜3ヶ月で最も濃く、6ヶ月〜1年で肌色に近く薄くなります。シリコンシート・紫外線対策・禁煙が瘢痕回復に役立ちます。
Q. 回復期間はどの程度ですか?
日常復帰は平均1〜2週、軽い運動は4〜6週、激しい運動は3ヶ月、瘢痕安定は6ヶ月〜1年です。単純に「何日」というよりも、剥離範囲・出血量・手術時間・術後管理により回復速度が変わるという点が重要です。喫煙・無理な活動・補正下着の未着用は回復を遅らせます。
Q. 出産後の下垂も矯正可能ですか?
はい、可能です。出産・授乳後の下垂は挙上術の最もよく見られる適応です。下垂程度(Regnault分類)と乳房ボリュームに応じて、挙上単独または挙上+インプラント併用が決定されます。ただし、追加の妊娠・授乳予定がある場合は、その後にお受けいただくことが一般的な推奨です。妊娠・授乳により乳房形状が再び変化する可能性があり、結果維持が困難となります。
Q. 再び下垂しますか?
はい、時間の経過により再び下垂する可能性があります。挙上術で下垂された乳房を引き上げても、皮膚弾力・体重変化・重力・加齢が継続的に作用するためです。ただし、再下垂までは通常5〜10年以上を要し、結果維持のため①安定した体重維持、②紫外線対策、③禁煙、④補正下着の推奨時期遵守が役立ちます。
Q. インプラント併用の可否はどのように決定しますか?
①乳房ボリューム、②下垂程度(Regnault 1〜3)、③患者様のご希望結果(自然な仕上がり vs フルボリューム)、④ライフスタイルを医師が総合的に評価いたします。ボリュームが十分なら挙上単独、ボリュームが不足ならインプラント併用が一般的な原則です。また、一部の術者は安全性を考慮し、挙上 → 6〜12ヶ月後にインプラント挿入(2段階)を推奨することもあります。モデルインプラント(サイザー)シミュレーションで結果を事前にご確認いただくと、判断に役立ちます。
参考文献:Regnault P. Breast Ptosis: Definition and Treatment. Clinics in Plastic Surgery. 1976(Regnault分類)· Weichman KE, et al. Plast Reconstr Surg. 2014(挙上9年追跡)· Hammond DC. Aesthet Surg J. · ASPS National Plastic Surgery Statistics.
本記事は上記資料を医学的専門知識に基づき、一般の方にもわかりやすく解説した内容です。個々の手術結果は体型、下垂程度、執刀医の手技により異なる場合があり、本記事は診断・治療に代わるものではありません。
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参考資料
- Hall-Findlay EJ. A simplified vertical reduction mammaplasty. Plast Reconstr Surg 2002
- Lejour M. Vertical mammaplasty: early complications after 250 personal consecutive cases. Plast Reconstr Surg 1994
- Spear SL et al. Mastopexy with implant augmentation. Plast Reconstr Surg 2006

